長年にわたり、病院や施設で看護師として働いてきました。
その日々は、喜びもあれば苦労もあり、人との関わりの中でたくさんの学びを得る時間でもありました。
病院や施設は、体や心に不安を抱えた方々が集まる場所です。だからこそ、日常の小さなやり取りの一つひとつが、その人の安心や笑顔につながるのだと実感してきました。
今日は、特に忘れられない二つの出来事を通して、「人とのかかわりで大切にしたいこと」についてお話ししたいと思います。
患者さんに教わった「見た目で判断しない看護ケア」
病院で勤務していた頃、ある日ひとりの患者さんが入院してきました。
その方は大きな刺青を体に入れ、顔もとても強面で、最初に見たとき「怖い」と感じてしまったのを今でも覚えています。
最初の頃は、必要な処置や声かけをするにも緊張してしまい、つい距離を取ってしまっていました。
しかし、毎日顔を合わせるうちに少しずつ言葉を交わすようになり、体調のことや世間話を重ねる中で、患者さんのやわらかな一面に気づくことができました。
ある日、私が「今日はお加減いかがですか?」と声をかけたとき、その方がにっこり笑って「ありがとう」と返してくださった瞬間、胸の奥が温かくなるのを感じました。
👉 この経験から学んだのは、**「人は見た目で判断してはいけない」**ということです。
第一印象にとらわれるのではなく、一歩勇気を出して声をかけることで、相手の本当の姿が見えてくる。
看護師として、そして一人の人間として、とても大切な学びをいただいた出来事でした。
介護施設で見た「親子関係のすれ違いと理解」
もうひとつ、忘れられないのは介護施設での経験です。
あるお母さんが入所されていて、ときどき娘さんが面会に来られていました。
その親子のやり取りを見て、私は驚きました。
お母さんは、娘さんに対していつも敬語で話されていたのです。
「ありがとうございます」
「〜してくださいね」
親子なのにまるで他人に接するような言葉づかいに、最初はとても不思議に思いました。
でも、その姿を見続けるうちに、背景にある思いが伝わってきました。
お母さんは「娘に迷惑をかけたくない」「弱いところを見せたくない」という気持ちから、あえて敬語を使っていたのです。
一方で娘さんはお母さんを心配するあまり、ときには強い口調になってしまうこともありました。
「どうしてできないの?」と厳しく言ってしまうことが、かえってお母さんを遠慮がちにさせてしまう…。
私はそのとき、特別なことをしたわけではありません。
ただ両者の気持ちを受け止め、お母さんには「娘さんは心配だからこそ強く言ってしまうんですね」と伝え、娘さんには「お母さんも頑張っていらっしゃいますよ」と声をかけました。
ほんの一言でしたが、その場の空気がふっとやわらいだのを感じました。
👉 この経験から学んだのは、**「親子であっても素直に言えないことがある」**ということです。
そして大切なのは、責めるのではなく「理解しよう」とする姿勢なのだと強く感じました。
長年の看護経験で気づいた「人との関わりの本質」
この二つの出来事から私が学んだのは、どちらも共通しています。
それは、**「相手を理解しようとする気持ちが、関係をやわらげる」**ということです。
病院の強面の患者さんからは、外見で判断しないことを。
施設のお母さんと娘さんからは、立場の違いを想像することを。
どちらも、ただ医療や介護の技術ではなく、心のあり方を教えてくれた出来事でした。
72歳の今だから伝えたい「人との接し方のコツ」
私は72歳になった今だからこそ、若い方々や同世代の方に伝えたいことがあります。
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見た目や第一印象で判断しない
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相手の気持ちを想像しながら言葉をかける
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苦手でも勇気を出して一言声をかける
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小さな笑顔や「大丈夫ですよ」の一言が力になる
この4つを意識するだけで、人との関わりはやさしく変わります。
看護師という仕事はもちろん大変でしたが、その中で得た学びは、今の私の生き方を支えてくれています。
まとめ|人とのかかわりを大切に、これからも歩んでいく
病院で出会った強面の患者さん、介護施設で出会った敬語を使うお母さんと娘さん。
どちらも私にとって、今でも宝物のような学びです。
「人は見た目で判断しない」
「親子であっても立場の違いを理解する」
この二つの経験を通して、私は人との関わりで大切なことを深く実感しました。
これからも、相手を思いやりながら小さな声かけを大事にしていきたいと思います。
そして、同じように悩んでいる方に「大丈夫、少しずつでいい」と伝えられる存在でいたいと思います。
