看護師として働き続けてきましたが、今でも一番大変だと感じるのは「認知症の方へのケア」です。
その理由は、とてもシンプルで、そして難しいからです。認知症ケアに「絶対の正解」はないからです。
今回の記事では、私が出会った「絵を描くことが好きな男性利用者さん」とのやり取りを中心に、認知症ケアの本質、そして苦手なことでも挑戦を続ける意味について、私自身の経験を交えてお話しします。
認知症ケアに「正解」がない苦しさ
看護の現場に長く立ってきて思うのは、認知症の方のケアには万能薬が存在しないということです。
例えば、ある日の記録には「落ち着いて会話できた」と書かれていても、翌日同じことをしても全く効果がない。昨日の笑顔が、今日は見られない。そんなことは日常茶飯事です。
実際の課題
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会話の途中で立ち上がってしまう
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数分前に話したことを忘れてしまう
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時に感情が不安定になり、周囲も緊張する
そのたびに「どうすれば安心して過ごしていただけるのか」と考えますが、模範解答はありません。
教科書的な知識はあるけれど、現場ではその通りにならないのです。
「できない」ではなく「できる」に寄り添う
そこで私は、一つの仮説を立てました。
👉 「できないことを追いかけるのではなく、その人ができること・好きなことに焦点を当てよう」
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「忘れる」ことを責めず、「覚えていること」に寄り添う
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「立ち歩く」ことを止めるのではなく、「座りたい」と思える工夫を探す
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「苦手」よりも「好き」に目を向ける
こうした小さな視点の転換が、ケアの質を変えるかもしれないと考えたのです。
「絵」がつないでくれた心
この仮説を試すきっかけになったのが、とある男性利用者さんとの出会いでした。
1. きっかけはご家族との会話
その方は体の自由も比較的あり、歩くこともできました。ただ、落ち着いて座っていることが難しく、すぐに立ち上がってしまうのです。安全面を考えると、スタッフも常に気を配らなければなりません。
ご家族に話を聞くと「昔は絵を描くのが好きだったんですよ」と教えてくださいました。
2. 道具を渡してみる
そこで私は、紙と色鉛筆をお渡ししてみました。
最初は少し戸惑いながらも、やがて好きな色を選び、線を描き始めました。
3. 表情の変化
その瞬間、表情が穏やかになり、背筋もまっすぐに伸びました。
わずか数分ではありましたが、安心して座っていられる時間が生まれたのです。
「数分の安心」が持つ大きな意味
その取り組みの結果は、数字で測れるものではありませんでした。
でも、私にとっても、利用者さんにとっても、とても大きな意味がありました。
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落ち着いて座れる時間が増えた
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安心した笑顔を見せてくださった
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スタッフも焦らず対応できるようになった
数分の安心。それがどれほど大切なことかを実感しました。
ケアのヒントをまとめる
この経験を通して得られた学びは、看護師としてだけでなく、一人の人間としても大切なものでした。
再現可能なチェックリスト
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好きなことを探す
過去の趣味や得意なことにヒントが隠れている。 -
できることを優先する
「できない」に注目せず、「できる」を一緒に楽しむ。 -
小さな工夫を重ねる
昨日ダメでも今日うまくいくかもしれない。 -
環境を整える
安心できる人・場所があると行動も落ち着く。 -
完璧を目指さない
数分でも安心できたら、それで十分。
AIと仲間とともに広げる挑戦
この経験を活かして、次はもっと広げたいことがあります。
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ご利用者ごとに「好きなことリスト」をつくる
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AIに記録を分析してもらい、行動パターンを可視化する
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awabotaの仲間と「ケアの工夫」を共有する記事を出す
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認知症ケアの知見をWeb5的に「個人の経験データ」として残す
まとめ|一人ではなく、支え合って挑戦する
私は看護師として長年働いてきましたが、認知症ケアの難しさに答えを見つけたことはありません。
それでも、**「できることに目を向ける」**というシンプルな視点が、確かに人を笑顔にするのです。
AIは補助輪のように支えてくれ、awabotaの仲間は背中を押してくれる。
だから72歳の私でも、こうして挑戦を続けられています。
読者のみなさんへ
あなたの大切な人には、安心できる「好きなこと」はありますか?
もし思い当たることがあれば、それを一緒にやってみてください。
その数分が、心を穏やかにし、笑顔を生むかもしれません。

