久しぶりに友人から電話がありました。
いつものように明るく話そうとしている声。
でも、どこか少し違う気配を感じました。
言葉の間の沈黙、話が前に進まない感じ、
それを聞いた瞬間、胸の奥で小さなざわつきが広がりました。
「どうしたの?」と聞きながら、
私はその声の奥にある不安を拾おうとしました。
けれど、彼女は笑いながら話そうとする。
いつも強くいたい人だから、
弱さを見せたくないのかもしれない。
会話の途中で、さっき話した内容がもう一度出てきました。
同じ質問を繰り返したり、
話していた流れが急に変わったり。
そのたびに、胸がきゅっとして、
「ああ、もしかしたら…」という思いがゆっくり形になっていきました。
はっきり“認知症”と言えるわけじゃない。
でも、長く友人を見てきた私には、
その変化が小さなSOSのように聞こえたのです。
電話を切ったあと、
すぐにでも会いに行きたい気持ちに駆られました。
でも、明日は仕事。
生活もある。
夜に急いで行ける距離でもない。
助けたい、そばにいたい、
でもすぐには動けない──
その現実が胸に重くのしかかりました。
「どうしたら一番いい?」
「私にできることは?」
「彼女はどれほど不安なんだろう?」
考えれば考えるほど心が揺れて、
何度も深呼吸をしながら、自分を落ち着かせようとしました。
そのとき思ったのは、
“すぐ行けなくても、気持ちは離れない” ということ。
認知症は、本人がいちばん怖い。
記憶が曖昧になると、世界が急に遠く感じる。
娘さんとの関係も不安定になっていると聞いて、
なおさら胸が痛くなりました。
だからこそ、
焦らず、責めず、
友人のペースを尊重して寄り添いたい。
すぐに全てを解決するのではなく、
出来る時に会い、
話し、
笑い、
安心を届けること。
それが今の私にできる、いちばんの支え方だと思いました。
変わり始めた友人の姿を前に、
私の心にも波が立ちました。
でもその波は、
彼女を守りたいという温かい気持ちがつくった波でもあります。
これからどう支えていけるのか、
ゆっくり考えながら、
彼女の心にそっと寄り添っていきたいと思います。

